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中国ビジネス実務指南


中国ビジネス実務指南― 麗澤大学外国語学部 教授 梶田 幸雄

【第225回】需要が高まる介護施設、日本企業買収の可能性も

中国共産党第19回党大会において市民が老後の問題に随分と悩んでいることが話題になった。高齢化社会が急速に進展しているところ、医療・健康及び養老保険が不十分であると言われる。  

養老保険に関しては、3本柱がある。

 第一に、(1)基本養老保険である。8.8億人(全人口の65%)が加入し、総資産は4.4億元であり、中国の養老保険の80%を占めている。しかし、養老保険の所得代替率は、世界銀行は70%以上が必要であるとしているところ、中国は40%と著しく低い。これを60%にまで高めたいとしているが、市民を満足させるには至らない。

 第二に、(2)企業年金制度である。養老保険の20%を占めるが、2016年に企業年金に加入している企業数は7万6,300社、全企業数の0.5%にも満たない。加入している従業員数も2,325万人でしかない。企業年金の総資産も1兆1,000億元しかない。

第三に、(3)商業養老保険である。これは、実態はまだない。2017年7月4日に国務院は「商業養老保険を速やかに発展させることに関する若干の意見」を発布した。2017年末までに個人所得税繰延型養老保険商品を導入する計画であるという。この保険は、拠出時・運用時は非課税で給付時に課税をする税制であり、EET税制と言われる。この制度によると、会社従業員は所得から養老保険料が控除され、養老基金の運用収益に対する所得税も減免され、年金給付時にのみ個人所得税が課されることになる。実は、2007年に天津濱海新区でその実験を始めると伝えられたが、10年経った今でも始まっていない。さまざまな技術的課題があり、進展が見られない。それでも7月4日の意見発布に至ったとすれば、ある程度の技術的目処がついたということであるのかも知れない。これからの発展が期待される養老保険であることには間違いがない。

 高齢化社会の課題として、かつ喫緊の課題として介護施設の建設ニーズがある。 

国連の推計によると中国で65歳以上の人数は2025年に2億人を超える。全国老齢工作委員会は高齢者向け産業の市場規模が2030年に22兆元に拡大すると予想する(日本経済新聞 2017年7月20日)。安川電機が中国で介護・リハビリロボット事業に参入するのもこうした市場の拡大を予測してのことである

 

2015年

2020年

2030年

2050年

2075年

全人口

14.158

14.3286

14.5329

13.8497

12.0581

高齢者

1.8360

2.3928

2.3543
3.4588

5. 4014

5.5708

比率

13.10%

16.70%

16.22%
23.80%

39.00%

46.20%

(出所)中国国家統計局及びWHO人口統計より
(注)2015年及び2020年は、中国国家統計局のデータ。
2030年の上段は、中国国家統計局の予測、下段はWHOの予測。
2050年及び2075年は、WHOの予測。

 上述したとおり、中国でシルバー産業は急速に拡大している。この中で、介護ビジネスの発展チャンスが大きい。ところが、今の中国に介護施設の建設や運営に関するノウハウはない。そこで介護先進国の日本から機械・設備や技術を買いたいし、マネジメントを学びたいところである。日本企業が中国に進出して合弁会社を立ち上げたり、技術・ノウハウを有償譲渡したりするチャンスも十分にある。また、おそらくは少なからぬ中国企業が、日本の介護ビジネス企業の株式取得など買収に関心を持っている。

梶田 幸雄氏 プロフィール 

  • ●現職
  • 麗澤大学外国語学部 教授
  • ほかに中小企業総合事業団国際化支援アドバイザー、富山県貿易・投資アドバイザー、北京航空航天大学法学院兼任教授などを兼務
  • ●略歴
  • 学歴:中央大学大学院博士後期課程修了。博士(法学)
  • 職歴:財団法人日中経済協会、日本能率協会総合研究所、日本経営システム研究所
  • ●専門分野
  • 中国法、国際企業法、商法
  • ●研究業績(主な著書)
  • 『チャイナウォール』(通商産業調査会、1993年)、『中国への事業展開と法制度』(国際商事仲裁協会、1995年)、『中国進出企業のトラブル事例と解決法』(日本能率協会マネジメントセンター、1995年)、『中国投資はなぜ失敗するか』(共著、亜紀書房、1996年)、『日中対訳 中国進出企業の各種契約モデル書式集』(日本能率協会マネジメントセンター、2003年)、『中国国際商事仲裁の実務』(中央経済社、2004年)など。

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