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  ■中国市場への視点 (株)チャイナワーク


「サプライサイドの構造改革」と
老舗お菓子ブランド「大白兎」の試み



3月5日から北京の人民大会堂で開かれていた第12期全国人民代表大会(全人代、日本の国会に相当)第4回全体会議が16日、新たな5カ年計画を承認して閉幕しました。会議冒頭で李克強総理が行った「政府活動報告(以下「報告」)」では、2015年の総括と2016年の経済、民生、環境対策、対外開放、政治等に関わる施政方針が示されました。
 この報告の中で強調されたポイントの一つが、「サプライサイドの構造改革(中国語:供給側結構性改革)」の推進により持続的成長を目指す、というものです。
 具体的には、@過剰生産能力の解消、A企業のコスト低減、B不動産在庫の解消、C有効な供給の拡大、D金融リスクの防止・解消、という5つの取り組み課題が挙げられています。
@で問題となっているのは主に、鉄鋼・石炭産業です。関連業種の企業再編、失業者の再就職支援といった、重い課題を抱えています。Cでは、需要の充足や喚起を図るための、新産業の発展や促進、技術・製品等のイノベーション、また農産品の品質向上等が求められています。
 このように、「過剰」と「不足(=供給拡大が必要)」が同時に取り上げられていますが、共通するのはサプライと対となる「デマンド・ニーズ」を直視し、それに即した構造改革を進めることで経済の活性化を図ろうという考えです。背景には、これまでの景気対策への過度な依存への反省があります。
 訪日中国人旅行者の「爆買い」も、中国側にとっては、Cの問題を浮き彫りにするショッキングな出来事であったといえます。即ち、消費需要があるのに中国国内でそれに応える商品を供給できていないという現実です。ただ一方では、これだけの消費需要がある、ということを認識する良いきっかけであったのかもしれません。

ところで、「サプライサイドの構造改革」という言葉は、今や流行語であるかのように普及しており、日々のニュースの中にも頻繁に登場しています。
 上海では21日、企業のコスト低減のために、社会保険料率の引き下げが実施されることが発表されました。今年1月1日以降の社会保険納付が対象となり、納付比率は全体として、現行の45.5%から43%に下がります。社会保険料は、個人負担分と企業負担分から成りますが、今回の2.5%の引き下げは、企業負担分を減らすものです。報道によると、これもサプライサイドの構造改革の重要な一手、ということです。

もう一つ、やはりこの言葉に関連付けて取り上げられていたのが、上海名物「大白兎(ホワイトラビット)」ブランドのミルクキャンディーにまつわる話です。「大白兎」は1959年に上海の老舗食品メーカー「冠生園」が発売して以来の人気商品で、1972年のニクソン大統領訪中の際には、周恩来氏がプレゼントとしてこのミルクキャンディーを渡したという逸話もあります。素朴な味わいとレトロ感が特徴の「大白兎」ですが、この度なんと、フランスの著名ファッションブランド「agnès b.(アニエスベー)」とのコラボ商品を限定発売して話題となっています。
 コラボ商品では、キャンディーの包装容器として、アニエスベーがデザインを手がけた兎形の「缶」が採用されています。中身のキャンディーはそのままですが、限定版は通常包装のものより10倍近く高価です。「包装にお金をかけるなんて」という声が起きそうなところですが、これが意外にも販売好調です。通常品より高価とはいえ、コラボ商品は1缶68元(約1200円)で、ちょっとしたプレゼントに丁度良い価格であること、加えて、単純な「味」や「安さ」だけではない価値に目を向ける消費ニーズが育ってきており、「大白兎」の今回の挑戦は、そうしたニーズを掴んだ好例として評価されているようです。

過剰ストックの調整という痛みを伴う課題と需要喚起という新たな挑戦が必要となる課題、中国経済の今後の舵取りがますます注目されます。 



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