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  ■中国市場への視点 (株)チャイナワーク


中国農村市場の取込み
  アリババグループ「農村タオバオ」事業について



 昨今、中国のインターネット通販市場の急速な拡大とそれに伴うビジネスチャンスに関する話題が多く聞かれますが、今回は中国農村部の消費を取込む新型サービス「農村タオバオ」の動向を御紹介します。
 「農村タオバオ」は、中国最大の電子商取引プラットホーム「タオバオ(淘宝)」を運営するアリババグループが、農村インターネット通販市場をターゲットに2014年11月に始動した新サービスです。専用サイトのトップページには、日用品やアパレル用品と並んで、農機や肥料等の農業用品のカテゴリが存在しています。
 「農村タオバオ」の本領は、ネット普及率の低い農村部の消費者のために、村単位の「サービススポット」を設置する点にあります。サービススポットでは、ここを訪れる人々のために「農村タオバオ」専用サイトを通じた商品の購入・配送はもちろん、反対に「農村タオバオ」をチャネルとして農産品等の販売代行を行うという、売り買い双方向のサービスを提供します。
 データでみると、2015年6月末現在、中国農村部のネットユーザーは1.86億人で、中国全体の27.9%を占めます。農村ネット通販市場規模は、2014年に1800億元(約3兆3400億円)に達し、2016年には4600億元(約8兆7400億円)を突破する見込みです。しかし一方で、中国農村部のネット普及率は30.1%(都市部では64.2%)と、未だ低い水準にあります。また、農村部の消費活動の現状はというと、商品の選択肢が乏しく価格が高い、偽モノが多い、遠方まで出かけなければ購入できない等、不便な面が多々あります。
 「農村タオバオ」は、確実に上昇しつつある農村部の消費力を上手くキャッチする、いわば痒い所に手が届くサービス方式と言えるでしょう。
アリババグループは、今後3〜5年内に100億元(約1900億円)を投資し、1000箇所の県レベル・サービスセンターと10万箇所の鎮(村)レベル・サービススポットを配置する計画です。インターネットを使って既存産業や地域経済を振興する国家戦略「互聯網+(インターネットプラス)」を背景に、地方政府との提携も進んでいます。
 2015年9月10日現在、農村タオバオのサービス拠点は全国21省に進出しています。河南省の新郷県では、「農村タオバオ」事業のために地元政府が300万元(約5700万円)を拠出して、37箇所のサービススポットを設置、30万人市場をカバーするサービス網となっています。同じく河南省の八柳樹村に開設された某サービススポットでは、開業日が「農村タオバオ」全体で実施された特売セールと重なり、開業初日において早くも、特売価格6.5万元(通常価格10数万元)のシボレーブランド自動車が7台、飛ぶように売れたといいます。南へ移り、広東省の広寧県では50箇所のサービススポットが設置され、開業日には計3000件・50万元(約950万円)相当の購買オーダーがあったそうです。
  「農村タオバオ」は、地方政府にとっても地域創生を担う一大関心事です。サービススポットの建設とともに、物流網の整備や雇用創出、販売代行による地域特産物の拡販等の複合的なメリットがもたらされるからです。つい先頃は、陝西省の某県政府が、同県での「農村タオバオ」始動に合わせて、県人民代表大会常務委員会の職員に各人1000元分の消費を強制する内容の正式文書を出したことが明るみになり、メディアや世論の強い批判に晒されるという事態まで発生しました。
 8月にはアリババグループと家電小売大手の蘇寧雲商グループとの提携が発表されました。
都市部では飽和状態の家電市場も、農村部ではまだまだチャンスが見込めるようです。実際、「農村タオバオ」の一番の売れ筋は大型家電であり、6月の特売セールでは、全国の農村タオバオ・サービススポット全体で、たったの一日のうちに洗濯機、液晶TV等、1万2000台の販売を達成したとのことです。
 ここからが本格始動の「農村タオバオ」ですが、アリババグループでは、サービススポットを足掛かりに、グループの擁する様々なサービスを農村に浸透させていく計画を打ち出しています。この新型サービスが新たな市場を切り拓けるのか、今後も注目されます。

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