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  ■中国市場への視点 (株)チャイナワーク


消費者権益保護とネット通販について

 近日、消費者権益保護に関するニュースを続けて目にしたので御紹介します。2014年3月15日より、4年ぶりの改正を経た「消費者権益保護法」(主席令第7号。以下「改正法」という)が施行されていますが、今般、最高人民法院が裁判における改正法の運用事例として、10件の代表的な判例を公開しました。
 この10件のうち3件が、ネット通販関連の訴訟に関するものでした。急成長を続けるネット通販市場ですが、取扱い商品にニセ物が紛れている、アフターサービスの責任所在が明確にならない等、その形態ゆえのトラブルも頻発しており、消費者権益保護という面では問題視されるケースが多々あります。今回取上げられた判例はそれぞれ、「通販商品の価格に詐欺行為があった(事前の表示価格と購入価格が異なった)」「取引後に消費者と協議一致した賠償が履行されなかった」「消費者が購入した商品が配送過程で他人によって受取られてしまった」という訴えに関するものでしたが、最終的にはいずれの場合においても消費者側の主張が認められています。
 先月5月28日には、中国国家工商総局がECサービス大手10社を集めて「EC企業行政指導座談会」を開き、インターネット取引プラットフォーム事業者である各社に、「プラットフォーム事業者が消費者権益保護の第一責任者となること」「(要件を満たす場合は)同事業者が生産者やサービス提供者に代わって賠償を先行すること」の2点を要請しています。背景には、近年、ネット通販に関する消費者からの苦情が急増していることがあります。2014年工商部門が受理したネット通販関連の苦情は7.78万件(前年比356%増)、また、2015年3月の消費者権益保護デー特別TV番組が受付けた苦情のうち、ネット通販関連のものは44.6%に上ったとのことです。
 このような中、上述の10社のうちの1社、「京東商城」に、アップル社iPhone商品の修理品を新品として販売しているのではないかという、トラブルの報道が出ました。CCTV(中国中央電視台)の報道によるもので、消費者からの訴えを取上げるとともに、アップル社のアフターサービス窓口への取材として、「どこで問題が起きたかは特定できないが、マザーボード、SIMカードスロット及び商品パッケージ上の3点のシリアルNO.が一致しない以上はアップル社の正規品とは証明できない」「京東経由で購入した消費者からの苦情が目立って多い」という話も紹介しています。京東側は、正規品を正規ルートから仕入れていること、商品の入庫や保管、物流・配送の過程も厳しく管理していることを主張しており、本件については調査が継続されます。
 「京東商城」といえば、アリババ集団の「Tモール」と並ぶBtoC向けECサービスの2強です。特に、直販モデルのECサービスとしては最大手であり、「京東自営」と銘打たれた取扱い商品は、ニセ物が横行するネット通販市場で数少ない信頼できる「本物」として信頼を集めていました。それだけに消費者のショックも大きく、現段階では調査中とはいえ、今後の京東側の対応が注目されます。
 「消費者権益保護法」については、改正法が出された際、事業者側の責任増大に関わる項目として、「消費者協会等による消費者権益公益訴訟の容認」という内容も注目されていました。これに関しては、年内にも関連の詳細規定が出される見込みとなっています。



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