Wi-Fiサービスの多様化
この度、上海を走る大手タクシー会社「大衆出租汽車公司」が2,000台のタクシーで無料Wi-Fiサービスの提供を開始しました。これまでも上海や広州の一部タクシーで、試験的に実施されてきた同サービスですが、今回のように、一斉に多くのタクシーで導入されるのは、中国国内のタクシー業界では初めての試みです。「大衆出租汽車公司」では今後、8月に6,000台、10月には全保有台数に近い9,000台で利用できるようにすることを計画しています。
このようなタクシー車輌へのWi-Fiサービスの導入は、運転手にもメリットがあります。地図アプリを活用することで、目的地まで迷うことなく向かうことができ、乗客と運転手両者のストレスを軽減できます。また、空いた時間に退屈することもなくなるでしょう。乗客はもちろん、車内でメールのやり取りだけでなく、チャットやゲーム、モバイル決済などが無料で利用できるようになります。
もともと中国は、日本に比べて無料Wi-Fiスポット数が多く、どこでも気軽にインターネットができる環境にあります。特に上海では、ホテルやレストラン、カフェはもちろんのこと、観光地や大型公園などの公共エリアでもWi-Fiスポットが設置され、時間制限はあるものの、誰でも利用できるようになっています。
このように、いつでもどこでもインターネットに接続できるWi-Fiスポットですが、これを利用してユーザーを獲得する動きもみられています。
中国のEC市場でも代表的なアリババのモバイル決済サービス「アリペイ」では、「支付宝銭包」というモバイル決済アプリによるサービスが提供されています。その「支付宝銭包」で、ユーザー向けの無料Wi-Fiプロジェクトが進められているのです。「支付宝銭包」のアプリをインストールしたユーザーがアリペイWi-Fiがカバーする区域に入ると、自動的にメッセージを受信し、そのメッセージを開くことによってオンラインになるというシステムを構築しようとしています。
実店舗を持つ企業がこのアプリを通じて無料Wi-Fiスポットの情報をユーザーへ提供し、ユーザーが接続するとカスタマーサポートやクーポン、キャンペーン情報などへアクセスできるようになります。また、ユーザーデータの一部を企業側に公開することでマーケティングに役立つという仕組みです。
この他にも、中国の大手不動産業者である「万達グループ」が中国各都市で展開するショッピングセンター「万達広場」内に無料Wi-Fiの設置を推し進めており、スマートフォンなどを利用したO2O(Online to Offline)での集客に力を入れる企業が今後も増えてきそうです。
本項で紹介したサービスは、依然として試験段階であるものがほとんどですが、スピードの速い中国で実際に目にする日はすぐにやってくるでしょう。
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