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  ■中国市場への視点 (株)チャイナワーク


上海市地下鉄が江蘇省昆山へ開通

 国慶節を過ぎると、上海蟹の美味しい季節となります。中国には、「九雌十雄」という言葉があるほど、「(旧暦の)9月は雌、10月は雄」の上海蟹が食べ頃で美味しいのです。旧暦の9月は新暦の10月頃ですので、今は蟹味噌がたくさん詰まった雌が食べ頃です。上海に出回る上海蟹の大半は、上海から江蘇省への玄関口である昆山市の陽澄湖で養殖されています。そこで、この季節になると、本場の上海蟹を食べようと、陽澄湖に旅行する上海人が少なくありません。

 今年も昆山へ上海蟹を食べに行こう、と思っていた折、上海から昆山までの地下鉄が開通したというニュースが発表されました。偶然なのか満を持してかはよしとして、上海蟹シーズンの地下鉄開通です。さて、今年は地下鉄で行ってみようと思い、地図を見てみると、地下鉄11号線が開通したのは「花橋」駅という場所で、昆山市中心部や高速鉄道の駅からは15km、陽澄湖からは30 km以上離れています。移動時間を考えると、上海から陽澄湖へは、やはり車か高速鉄道とタクシーがベターなようです。

 さて、地下鉄の最大のメリットは安さと気軽さです。地下鉄と高速鉄道の運賃及び時間を比較すると一長一短ではありますが、中国の高速鉄道は日本の新幹線のように定期切符などありませんので、運賃の問題はともかく、切符購入や時間変更の手続きに手間がかかるため、高速鉄道で出勤していると言うのは聞いたことがありません。しかし地下鉄であれば、交通ICカードにチャージしておくだけで乗車できますから、今回の地下鉄開通によって、花橋駅周辺は上海への通勤圏内に入ったと言えるでしょう。例えば、市内中心部から終点「花橋」駅までは、乗車時間約70分ですので、花橋周辺に住み上海に通勤する場合、ドアtoドアで2時間前後でしょう。その運賃は7元(日本円112円)と経済的です。また、昆山と上海の各交通ICカードは互いの場所でも使用可能な上、地下鉄とバスを乗り次ぐ場合にいずれも交通ICカードで支払うと、バス運賃が通常運賃よりも40%も割引になるそうで大変便利です。

 このように、地下鉄が開通し、交通アクセスが便利になると、不動産価格の高騰は必至です。最近では、上海も日本の首都圏のように、市内中心部の地価が高すぎるため、マイホームを郊外に探し求める人が増えていますが、今後は地下鉄の拡張次第で、郊外どころか市外へと足を伸ばす人も増えるでしょう。上海解放日報社傘下の「新聞晩報」によると、地下鉄が開通した17日の花橋駅周辺における中古住宅価格が、前日の16日に比べ約8%上昇したそうです。また、地下鉄で無料配布される「時代報」の10月17日付け記事によると、新しく開通した地下鉄11号線沿いの19のマンションについて、1平米当たり1000〜3000元(約16000〜48000円)の値上がりが見られるそうです。

 この度の省を跨ぐ地下鉄開通は、全国で初めてですが、今後は蘇州や無錫への路線拡張構想もあるようです。また、南京から安徽省(天長市)への地下鉄路線は、2015年から2020年にかけて徐々に開通していくことが発表されています。地下鉄の路線が拡張されるだけでなく、交通ICカードが市や省を越えて利用可能になるなど、インフラ面での整備が進むことは利用者にとってありがたいことです。これから外地で地下鉄やバスを利用する際に、小銭がないことに慌てなくて済むのかと思うと、改めて上海地下鉄の発達に便利さを実感します。


 
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