上海の現地法人を退職してもらうことになった従業員たちが、経済補償金には、時間外手当(残業代)が含まれるべきだと出張しています。しかし、各方面に確認しても、聞いた専門家によって回答が異なるため判断がつきません。無難に残業代は含まれると解釈したほうがよいのでしょうか?

経済補償金とは、雇用企業が労働契約を解除する際に労働者に支払う法定退職費金のようなものです。弊社サイトでは、経済補償金については以前取り上げていますので、以下のサイトでご確認ください。
中国市場への視点 〜経済補償金について〜
https://www.chinawork.co.jp/shiten1/shiten-economic%20compensation.html

上記のサイトで説明している通り、経済補償金の基礎となる法律に基づく計算方法は、離職前の12 カ月における平均月収×勤続年数(年/カ月分)となっています。ここでいう平均月収とは、12 カ月における賃金、ボーナス、手当、補助金などを含めた収入合計を12 カ月で割った数字のことです。

もう⼀つのルールに、労働者の月収が、雇用企業の所在する直轄市や市レベルの人⺠政府が公表する前年度従業員給与と比較し3倍以上の場合、当該地域の平均月収の3倍を基準として算出する。この場合の経済補償金の勤続年数の上限は12 年を超えないものとします。(労働契約法第47 条)

さて、ご質問は、12 カ月における賃金、ボーナス、手当、補助金などを含めた合計収入の中に、時間外手当は含まれるかどうかということです。労働契約法実施条例第27 条には、それ以上の具体的な規定はありません。

時間外手当については、「時間外勤務の算出方法について」https://chinawork.co.jp/fqa-20210629/6を参照してください。

以上の内容を踏まえて、弊社現地スタッフが労働関連部門等に確認を進めたところ、北京、蘇州、深圳などでは、時間外手当は経済補償金に含まれますが、上海市では含まれないことがわかりました。例えば、上海市人力資源和社会保険局への確認では、「時間外手当は含まない」と明確な回答でしたが、このことは労働関連法規には規定されていないとの説明でした。

しかし根拠がなければ、主張している従業員への説得力が欠けます。そのため、さらにその法律的根拠を調べて上海市労働争議仲裁委員に確認を試みたところ、やっと回答を聞くことができました。
すなわち、「上海市では経済補償金に時間外手当は含まない。上海市⾼級人⺠法院より通知した『上海⾼院⺠事法律適用問答(2013 年第1 期)』(http://www.fujiacm.cn/lswz/28803)がその根拠である」と明確に説明してくれたのです。
この第5 項には、「経済補償金は労働者の正常勤務時間賃金を基準として計算するべきである。残業賃金は労働者に対して付加的な労働による報酬を提供するもので、正常な勤務時間内の労働報酬ではない。
元労働部の『中華人⺠共和国労働法の若⼲の問題に関する意⾒』第55 条と『労働契約法実施条例』第27条の規定から⾒ても、経済補償金の計算基数を計算する時、残業代を含めるべきではないと考える…」

――いかがでしょうか。この通知を読むと、“なるほど”と腑に落ちますが、北京、蘇州、深圳では、このような解釈になっていない。ここが中国の法の解釈の難しいところです。中央政府の公布した同じ法規を巡って各地域によって運用が異なり、各地方政府の裁量に任されていることが中国ではよく起こります。専門家でさえ意⾒が割れる法の解釈を巡って、ビジネス上の⾒解で混乱した場合、どこに確認にいけばよいのか…。今回の事例を参考にしていただくとともに、もしそれでも困ったときには、こうした時のノウハウを持っている弊社に御相談くださるようお願いいたします。

以 上

画像をアップロード

中国ビジネスヒントにお役に立つ情報が満載

※いいことイロイロ※
・毎週火曜日最新情報配信
・独自の視点から現在の中国市場をレポート
・中国の最新法令・政策をいち早く配信
・日系企業の動向情報は一目でわかる