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中国ビジネス実務指南


中国ビジネス実務指南― 麗澤大学外国語学部 教授 梶田 幸雄

【第213回】拡大する越境ECにチャンス

経済産業省は、日本の商品を中国に販売する越境ECの市場規模は2015年に7,956億円であったが、2019年には2兆3,359億円まで拡大すると予測している。中国人観光客によるインバウンド需要の勢いはかつてほどではなくなったが、インバウンド需要の高かった商品を扱う企業にとっては、豊かになった中国人をターゲットとした越境ECを活用した中国市場開拓に大きなチャンスがある。

◇ ◇ ◇

 松屋は、2017年3月21日に中国本土の顧客を対象とする越境ECを開始すると発表した(松屋のホームページ「経営情報」より)。 

 松屋によると、これまでの中国における越境 ECウェブサイトはショッピングモールなどプラットフォームであり、膨大な出店者の中から選ばれ、注目されるためには多大な広告宣伝コストが必要であり、大きな負担となっていた。そこで、松屋は、中国本土におけるECおよびマーケティング、プロモーション事業のノウハウを持つAzoya International (Hong Kong) Ltd. と連携して、現地向けに「自社のECサイト」を立ち上げることにしたということである。スタート時は「ベビー服」、「化粧品」など約700点、半年後に3,000点、1年後には 10,000点の品揃えを目指すとしている。

 日本にいる中国人留学生からは、「代購」(輸入代行)という言葉を良く聞いていた。彼らが、中国大陸にいる中国人から商品を購入の依頼を受け、百貨店やドラッグストアで商品を代理購入するというものである。越境ECが制度化され、普及する素地が早くからあった。

 従来型「保税区方式」の越境ECも好調である。ANAホールディングス(ANAHD)は、中国語のネット通販サイト「ANAカーゴダイレクトモール」を立ち上げる(日本経済新聞 2017228日)。グループ企業と協力し、通関手続きから商品輸送までを一手に引き受ける。日本企業約300社が出店し、日用品や化粧品など1,5002,000点の商品が登録される見通しであるという。6月にはスマートフォン(スマホ)向けのアプリも提供する予定である。中国ネット大手の騰訊控股(テンセント)が販売促進や決済で協力し、電子マネー「ウィーチャットペイ」での支払いにも対応する。

  ただ、現時点において越境ECに対する監督管理制度が完全に確立されているかというと必ずしもそうではない。財政部は、201648日から保税区を経由して輸入される物品を越境EC取引とみなし、税を軽減し、手続きを簡素化していたが、直送モデルは「個人取引」とみなし、制度上の越境EC取引の枠組みに含めていなかった。しかし、これは実態のそぐわない側面があり、そこで、商務部は、201811日から新たな管理モデルを適用することとした。ここでは、個人が越境ECにより購入する個人用の物品についても越境ECとして管理することになる。この新政策は、さらに越境ECを拡大させる契機にもなるだろう。

 中国国際電子商務博覧会が20174月に浙江省義烏市で開催された。中国において電子商取引を発展させることは、供給サイド改革にとっても重要なことである。中国国内EC2012年の8.1兆元から2016年には26.1兆元へと年34%の成長を遂げている。

◇ ◇ ◇

 日本企業にとって中国の越境EC発展のメリットは、中国事業展開を単独では果たし得ない企業が、越境ECにより自社製品を中国に売り込むことができることである。また、どのような商品(デザイン、品質、価格帯など)が好まれるのかを判断するマーケティング及びターゲティングの機能も持ち得る。越境ECに対する監督管理の新制度確立の動向を見守りたい。

【 梶田 幸雄氏 プロフィール 】

  • ●現職
  • 麗澤大学外国語学部 教授
  • ほかに中小企業総合事業団国際化支援アドバイザー、富山県貿易・投資アドバイザー、北京航空航天大学法学院兼任教授などを兼務
  • ●略歴
  • 学歴:中央大学大学院博士後期課程修了。博士(法学)
  • 職歴:財団法人日中経済協会、日本能率協会総合研究所、日本経営システム研究所
  • ●専門分野
  • 中国法、国際企業法、商法
  • ●研究業績(主な著書)
  • 『チャイナウォール』(通商産業調査会、1993年)、『中国への事業展開と法制度』(国際商事仲裁協会、1995年)、『中国進出企業のトラブル事例と解決法』(日本能率協会マネジメントセンター、1995年)、『中国投資はなぜ失敗するか』(共著、亜紀書房、1996年)、『日中対訳 中国進出企業の各種契約モデル書式集』(日本能率協会マネジメントセンター、2003年)、『中国国際商事仲裁の実務』(中央経済社、2004年)など。

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