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中国ビジネス実務指南


中国ビジネス実務指南― 麗澤大学外国語学部 教授 梶田 幸雄

【第217回】中等都市建設、経済格差縮小へ日本の貢献可能性

中国で一部の富を独裁する者が増えている。率直に言って、中間所得層の拡大も行き詰まりそうな気配である。貧困層は、教育の機会均等が与えられていないので、弱者群体から抜け出す道がない状況もありはしないかと懸念する。

中国が「小康社会」の実現を目指そうとする場合、こうした趨勢を改めなければならない。どうすれば良いのか。この点について、遅福林・中国(海南)改革発展研究院院長が、経済日報のインタビューに答えて、以下のとおりの指摘をしている(「拡大中等収入群体」経済日報 2017年6月9日)。  

第一には、(1)中間所得層拡大の可能性について問われ、これについては、①産業構造、②消費構造、③都市構造の3つの転換により中間所得層が拡大すると言う。第二には、(2)中間所得層拡大のための施策について問われ、これについては、①実体経済の構造的不均衡の転換、②農民の財産収益の増加、③財産権保護制度の強化の必要性を説く。第三には、(3)中間所得層拡大の構造的矛盾をいかに改革するかについて問われ、これについては、①都市構造の変革、②教育構造の変革、③税収構造の変革を説く。  

以下、上記の主要な論点について検討したい。  (1)-①の産業構造に関しては、2020年にサービス業の全産業に占める割合が58%程度になり、2030年には70%になり、サービス業への従事者数が全就業人口の50%程度になると予測される。これに伴い、(1)-②都市住民のサービス型消費も現在の40%程度から50%程度に増える。2020年には (1)-③都市化率は60%程度になる。農民及び農民工が、中間所得層に入ってくる可能性が高い。  

ただ、問題は、(2)中間所得層のボラティリティーが高く、貧富の差が拡大しはしないかということである。(2)-①現在、株式や不動産が中間所得層の重要な資産形成の手段となっているが、このことは中間所得層の資産を不安定にもさせ、所得格差拡大の要因ともなっている。実体経済の力をつける必要があり、農民の財産収益を増やす施策を取る必要がある。(2)-②とりわけ喫緊の課題としては、農村の土地用途管理制度改革を行い、農民の財産権を増やし、収益を増やすようにすることである。さらに(2)-③財産権保護制度の立法化を確立する必要がある。  

(3)中間所得層拡大の構造的矛盾に関しては、次の問題がある。(3)-①都市構造の変革ということでは、戸籍制度改革(戸籍制度は、労働力供給上の障害になっている。)、土地譲渡制度の変革が必要である。(3)-②教育構造の変革では、700万人超の大学卒業生の就業問題を解決しなければならない(2016年末までに、中国には私立学校が17万1,000校あり、この卒業生は2015年に比べて254万人増えている。China encourages private investment in education, China Daily,2017.1.19)。また、製造業において不足しているのが実学を習得し、技術要員となれる人材であるので、こうした人材の育成が求められる。この点に関しては、日本の産業界では高級技術者の割合が40%、ドイツでは50%いるのに対して、中国では5%しかいないと言われる。さらに、(3)-③低所得層の納税負担を軽減し、間接税を主体とする徴税構造を直接税主体に改める。  

さて、このように見てくると、潜在成長率を抑制しかねない政策上、制度上の障碍が随分とあることがわかる。例えば、都市化を推進してきた副産物として、中国政府の思惑とは別に、農民が貧民化してきたという事実があるのではないか。  

中国が中等都市建設をし、中間所得層を増やし、経済格差の縮小をしようとするとき、日本(企業)として協力し、またビジネスチャンスに繋がりそうなことが随分とあると考えられる。サービス業の育成・発展施策、内陸部の中小都市建設の立案、中小事業者や農民への融資制度、土地改革政策及び実務家としての土地の有効利用方法、実学を中心とした教育ビジネスなどは、日本の官民の得意分野である。

【 梶田 幸雄氏 プロフィール 】

  • ●現職
  • 麗澤大学外国語学部 教授
  • ほかに中小企業総合事業団国際化支援アドバイザー、富山県貿易・投資アドバイザー、北京航空航天大学法学院兼任教授などを兼務
  • ●略歴
  • 学歴:中央大学大学院博士後期課程修了。博士(法学)
  • 職歴:財団法人日中経済協会、日本能率協会総合研究所、日本経営システム研究所
  • ●専門分野
  • 中国法、国際企業法、商法
  • ●研究業績(主な著書)
  • 『チャイナウォール』(通商産業調査会、1993年)、『中国への事業展開と法制度』(国際商事仲裁協会、1995年)、『中国進出企業のトラブル事例と解決法』(日本能率協会マネジメントセンター、1995年)、『中国投資はなぜ失敗するか』(共著、亜紀書房、1996年)、『日中対訳 中国進出企業の各種契約モデル書式集』(日本能率協会マネジメントセンター、2003年)、『中国国際商事仲裁の実務』(中央経済社、2004年)など。

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