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  ■中国市場への視点 (株)チャイナワーク


現地で見た日本料理店の実態

杭州市の日本料理店

先日、南京市と杭州市を訪れる機会がありましたので、現地で見た日本料理店の実態をご紹介します。
中国最大の飲食店情報サイトである『大衆点評』によると、「南京、日本料理」は883軒、「杭州、日本料理」は1,055軒という検索結果となりました(上海市は3,537軒)。また、外務省が発表した「海外在留邦人数調査」によると、在留邦人は南京市が576人で、杭州市が1,058人とありました。上海市の在留邦人数が46,115人であることから、上海市では、日本人約13人に1軒の割合で日本料理店が存在することになります。ところが、この計算式を南京市と杭州市に当てはめると、南京市では、日本人約1.5人に1軒、杭州市にいたっては、日本人約1人に1軒の割合で日本料理店が存在するのです。この数字だけを見ても、日本人相手では商売が成り立たないことがよく分かります。前述の飲食店情報サイトを見ていると、南京市及び杭州市の日本料理店は、どの店舗もおおむね評価が高く、熱意あふれる投稿が見られることからも、地元の中国人に受ける店作りをしていることが想像できます。

杭州市の日本料理店が立ち並ぶエリアにて
杭州市内で日本料理店が立ち並ぶエリアを歩いている時、とある日本料理店前の大行列が目にとまりました。10人ほどが座れるカウンターのみのこじんまりとした店内、壁の黒板にはおすすめの料理とお酒が書かれ、棚には日本酒や焼酎がずらりと並んでいます。“居酒屋”ではなく、“居食屋”と書かれた看板の下には、待ち番号を握り締めた十数人の中国人がスマホ片手に静かに順番を待っています。何かキャンペーンをしているわけでもなく、おすすめメニューが店頭に張り出されているわけでもない、至って普通のどこにでもありそうな外観の、このお店のどこにこれだけの人を惹きつける魅力があるのでしょうか。その謎を解明すべく、行列に並ぶことを決めました。しかし、待ち番号をもらおうと店員に声をかけると、もう配布していないと言うのです。理由は、「今並んでいる人だけで、1時間以上待つから」とのことでした。その待ち時間にも驚きましたが、それ以上に長時間も厭わずに静かに待っている現地の方々の姿に驚きました。この状況に、筆者であれば、諦めて別の日本料理店にします。なぜならその場所は、杭州市一と言ってもいいほど日本料理店が立ち並ぶエリアだからです。
結局のところ、この店で食事をすることは諦めましたが、もう少し様子を見てみることにしました。客層は、20代の若者が中心で、女性の方が若干多く見られました。しかし、カップルや男性のみのグループもいたため、男女比はそれほど変わらないのではないでしょうか。女性の1人客もいたので、入りやすいお店なのでしょう。次に、料理ですが、手書きのメニューがA4紙1枚あるだけで、刺身が7種、サラダが2種、主食が8種、握り寿司が11種にデザート1種、とそれほど多くありません。同じものを注文している人がいないので、決まった人気メニューがある様子ではありませんでした。
料理よりも気になったのは、お客さんが飲んでいる飲み物です。この時カウンターにいた10人全員がお酒を飲んでいませんでした。無料で提供されているレモン水かソフトドリンクを頼んでいるようでした。中国の若者はお酒を飲まなくなったと聞いていましたが、まさにその通りです。
しばらく観察していましたが、やはり人気の理由が分かりません。そこで、飲食店情報サイトの投稿を見てみることにしてみました。たくさんの投稿がされており、どれも高い評価が付いています。この中には1品ずつ料理の説明をしている投稿者もいたほど。2,000件以上もある投稿のうちの一部ですが、投稿にあるこのお店の評価を簡単にまとめると次のようになります。「価格がリーズナブル」「暖かみのある手書きメニュー」「料理の見た目、ボリューム」「見た目の良い店員」「カウンター越しに調理の様子が見られる」との評価がありました。このほか、「日本風の店内装飾」メニューにある霜降り和牛握りやタン炙り握り、フォアグラ握りなど一風変わった料理も一般的な日本料理店では味わえない魅力として、若者を惹きつけているのでしょう。杭州在住の日本人にこの店の評判を聞いたところ、自身はもちろん周りの日本人も行ったことがないとのことでした。大人気で常に行列ができていることは知っているようですが、誰も行列を待つことができず、実態が分からないままだそうです。

中国人の好みを理解するために
よく言われることですが、日本人の好みと中国人の好みは全く違います。周囲に評判を聞いたとしても、日系企業に勤める中国人であれば、好みが日本人と近いことも多く、全てを参考にすることはできません。中国人向けに商売するため、もっと深く入り込むのであれば、自分の足で歩いて、目の前の行列に飛び込むことも一つの方法であると改めて感じました。

後日談として、あとで調べたところによると、前述の行列店は杭州市内にあと2店舗あり、うち1店舗ではカウ
ンターのほかにテーブル席もあるようです。もう少ししっかり調べて行く必要があると深く反省しました。   (M.N)

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