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  ■中国市場への視点 (株)チャイナワーク


日本人の利用を目指す銀聯カード


 カードの累計発行枚数が全世界で50億万枚を超えている『銀聯カード』。中国の銀行で発行されるキャッシュカードの全てに「銀聯マーク」が付けられ、デビットカードとしてそのまま買物に利用できます。中国銀聯の発表によれば、2015年の第1四半期における銀聯カードの取扱高は約1兆9000億ドルで、米VISAの1兆7500億ドルを初めて抜きました。海外旅行をする中国人が増え、ほぼ全ての旅行者が銀聯カードを所持し、それぞれの旅行先でその旺盛な消費意欲を発揮することが大きく影響していると見られています。近年の中国人観光客による“爆買い”の影響で、日本でも銀聯カードで決済のできる店舗が増えているので、一度はこのロゴマークを目にしたことがあるのではないでしょうか。

 実はこのカード、中国国内及び海外での買物だけではなく、ロゴマークの付いているATMがあれば海外で現地通貨を引き出せるのです。日本では、セブン銀行やイオン銀行、ゆうちょ銀行、各メガバンクのATMで日本円を引き出すことができます。これまでは、1日1万元(約19万円)という上限だけで、年間の上限は設定されていませんでした。しかし、この10月1日より、年間10万元(約190万円)という上限が設けられることになったのです。国家外貨管理局からは、「一部で頻繁な現金引き出しなど異常な状況が見られており、マネーロンダリング防止の観点などから対応が必要になっていた」との発表がありましたが、中国からの資本流出を懸念した対応策のようです。

 しかし、店頭での商品購入などに対する一般的なカード利用では上限は設けられないため、“爆買い”への影響は少なそうです。これにより、現金よりカードを使って買物をする観光客が増えると、店舗側も銀聯カードへの対応が急務となるでしょう。観光客の利用が多い家電量販店やドラッグストアは既に銀聯カード対応となっている店舗が多い中、10月の国慶節休暇を前に大手コンビニエンスストアが銀聯カード対応を始めました。セブンイレブンは全国の約1万8000店で、ローソンでは全国の約1万2000店で銀聯カード決済ができるようになり、ファミリーマートは前者2社に先行して早くから専用端末を導入しています。

 このようなサービス拡充には、訪日中国人への対応強化以外に別の狙いがあります。中国市場において、銀聯は既に9割を超えるシェアを占めている中で、VISAやMasterに並ぶ国際カードブランドに押し上げるため、2014年10月には、銀行カードの決済業務を外資系企業に開放しました。各国のカード会社が参入し、競争が激化することが予想されています。中国人以外にも銀聯カードを利用してもらう必要があるのです。中国銀聯は日本人にも銀聯カードの利用を普及させるため、地方の商業施設や全国チェーン店に対する「銀聯ネットワーク作り」に力を入れるべく、その一環としてコンビニでの対応端末導入を増やしているのです。売上に応じて小売店が銀聯に支払う手数料率が他のカード会社に比べて高く、現金払いを好んでカードの利用率が低いという日本での普及に向けた課題もあります。しかし、2014年に見る日本国内における銀聯の取扱高は約4,800億円で、2015年も月間700億円前後での推移が見られ、前年を大きく上回ると予想されている中で、日本人による銀聯カードの利用を狙う普及活動の今後に注目です。



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