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  ■中国市場への視点 (株)チャイナワーク


中国人の爆買いと自由化

 
日本の街を歩いていると、聞こえてくる中国語の多さに驚かされます。以前は中国語が聞こえるだけで振り返ってしまいましたが、今では聞かない日、中国人を見かけない日はありません。
今年の春節連休期間の中国人訪日観光客数は45万人を超え、消費金額は約1,145億円と言われています。先日、発表された大手百貨店3社(大丸松坂屋、高島屋、三越伊勢丹)の2015年2月売上高は、いずれも前年を上回りました。春節連休期間の中国人観光客による買物が大きく影響したと伝えられえています。中国人観光客の「爆買い」は、景気の回復が見え隠れする日本にとっては大きな潤いになっていると感じます。

 中国人観光客による売上増加で喜ぶ日本とは対照的に、深センに近い香港郊外では爆買いへの抗議デモが発生しました。中国本土からの観光客が、転売を目的として香港で幼児用ミルクや日用品を大量に購入し、香港では価格の高騰や品薄の状態が続いていました。このような事態となった要因は、2009年から発給が開始されている深セン戸籍住民向けの「1年数次通行証」によるものです。
 この通行証が許可される以前の2003年に、中国本土から香港への個人旅行が可能となりました。現在までに49都市の住民が個人旅行で香港を訪れることができます。当初、この開放を香港側も歓迎しており、消費が増加、経済的にも活発になると想定をしていました。またSARSの影響で落ち込んでいた香港の小売販売高上昇への起爆剤となることを期待していました。
しかし、上述の深セン戸籍住民向けへの「1年数次通行証」の発給により、予想していなかった「爆買い」が発生。2014年における1年数次通行証で香港に渡航した観光客は、1,500万人に達したと言われています。この通行証を利用した人の渡航回数は1人あたり平均して9回渡航で、このうち20%以上の人が10回以上渡航しています。香港で販売されていた粉ミルクや生活用品が大量に購入され、香港で生活をしている住民にとっては、不便な状況となりました。それが発展して、今回のデモに繋がります。

 香港が中国に返還されて17年が経ちます。 新浪財経香港所長彭氏の記事によると、これまでの過程において、中国本土と香港の間では段階的に「自由」化が進められてきました。また広東自由貿易試験区を設置する方針を決定したことも、中国本土と香港の合作を徹底化するための重要なプラットフォームとなることを見込んでのものです。香港が中国本土の外国投資に積極的な国内企業への金融や法律サービスなどを提供し、融資や資産管理の分野で利用してもらいたいとしています。また現在、香港のGDPの内訳は、大きく分けて貿易物流業、金融業、専門・その他のサービスの3つに分類されます。今後、融資や金融、専門サービスをメインとして、香港経済の活性化と産業転換を行うことで、さらなる自由化を進めていきたいとしています。

 香港のデモでは、1年数次通行証の発給を差し止めるような声も上がっています。3月5日から始まる全人代で中央政府と対応策を協議するとしています。この協議の結果によって、日本にどのような経済的影響が発生するのか、注目していきたいところです。


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