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  ■中国市場への視点 (株)チャイナワーク


マカオ返還15周年に際して


 先の12月15日には79日間続いた香港デモ隊の道路占拠に終止符が打たれましたが、1997年の香港返還を後追いする形で1999年にポルトガルから中国に返還されたマカオが、今年12月20日に返還15周年を迎えます。

 マカオは面積約30ku、人口約58万人(2012年)の中国特別行政区で、国内外にその名を知られる有名観光都市です。返還後、飛躍的な経済発展を遂げてきました。それを物語る数字はたくさんありますが、例えば訪問旅行者数は2000年の800万人から現状の3000万人にまで拡大しました。これがいかに大きな数字かは、2013年の訪日外国人旅行者総数が1036万人であったのと比較すれば、一目瞭然でしょう。
 中国中央政府もマカオ観光の後押しをしています。2003年に新型肺炎(SARS)の流行により観光が落ち込んだのを期に、中国本土住民のマカオへの個人旅行を解禁、当初は直轄市等限られた都市の本土住民のみが対象でしたが、その後適用範囲を広げ、今ではマカオ旅行者の6割は中国本土住民が占めています。
 そして、マカオ観光といえば誰しも連想するのがカジノですが、返還後、特区政府は「カジノを筆頭とするサービス業を主体とし、その他業界も協調して発展していく」という基本方針を打出し、マカオ経済は年平均実質GDP成長率12.7%という、同時期の世界経済を見ても最速となるペースで成長してきました。2013年にはカジノ税はマカオの財政収入の76.4%を占めるに至っています。 

 返還15周年に当たって、中国中央政府はマカオを「一国二制度」の成功と評しています。国際的にも、2005年には英国の雑誌「海外直接投資(FDI)」によって「アジアで最も経済発展の可能性を有する都市」に選出され、今年には国際通貨基金(IMF)が発表した報告の中で、「マカオ特区の経済は先行きが明るく、総合経済はサービス輸出と投資の支えの下、中期的には8〜10%の高い成長率を維持できる見込みであり、失業率は1.7%の低水準に維持されるだろう」と評されています。
 マカオでは特色ある施策の一つとして、2008年から域内住民に対する現金支給を実施しています。特区政府の予算組み発表によると、2015年もこの施策は継続され、支給金額は永住性住民については1人当たり9,000パタカ(約13万円)、非永住性住民は5,400パタカ(約7万8千円)となる見込みです。

 こうして華やかな発展を遂げているマカオですが、何らのひずみが無いわけではありません。過去には、返還8年目となる2007年に「失業、低賃金、政府の腐敗問題」に反発した大規模なデモが発生し、制御不能な状況となって逮捕者が出たこともありました。
現金支給の施策も、デモの要因となった経済格差に対する不満を宥める手立ての一つといえるでしょう。
 今年に入り、マカオ経済は前半は緩やかな成長、後半は下降傾向です。中国中央政府が進める「反腐敗キャンペーン」や香港デモの影響を大きく受けた模様ですが、特区政府は、経済が調整と安定の時期に入ったと見なしており、カジノ以外にも多元的な発展を目指し、「国際的観光リゾート中心」となることを目標に掲げています。
 返還記念日の12月20日には、中国の習近平国家主席のマカオ訪問が決まっています。マカオの市民派政治団体が同日にマカオ市街中心部で「政治改革、特区行政長官選挙への普通選挙導入」等を訴えるデモ行進の実施を発表しており、厳戒態勢の中、デモが実行されるのか否か、事態に注目が集まっています。


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