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  ■中国市場への視点 (株)チャイナワーク


ネット通販企業・物流企業によるO2O戦略の拡大について

 2013年、中国の宅配便サービス(エクスプレスサービス。中国語:快逓)企業全体の年間業務取扱量は92億件に達し、市場規模は世界第2位となりました。市場成長率は、前年同期比61.6%増、過去5年間平均では43.5%増です。
 この市場拡大は、主にEC取引市場の急成長によりもたらされたものです。2013年、企業間のEC取引を含めたEC市場全体の取引規模は前年同期比29.9%増の10兆2000億元(約166兆円)、そのうち小売のネット通販取引規模は前年同期比42.8%増の1兆8500億元(約30兆円)でした。
 このような状況の中、「ネット通販企業がサービス向上等を目的として物流分野に参入する」、その一方で「物流企業が取扱量アップ等を目的としてネット通販等のEC分野に参入する」という、交差する流れが新局面を作り出しています。
 以下に物流事業とネット通販の融合を図る3社の動きを紹介しますが、ここでもう一つポイントとなっているのが「O2O(オンラインとオフラインの購買活動が連携し合う)」の実践です。
 2014年5月18日、宅配便サービスの民営企業最大手・順豊速運(SFエクスプレス)が「ロ黒客」という名称で、多機能サービスを提供する実店舗を一斉オープンしました。その数、中国全土で518店です。順豊速運は良質なサービスで知られ、2014年1月現在で、中国国内及び海外に約24万人の従業員を抱え、中国国内に7,800箇所以上のサービス拠点を設置し、自社で1万台の車輛と14機の航空機を有する、宅配便サービス界のブランド企業です。
 「ロ黒客」は集合住宅の1階など、住民の生活に密接する場所に出店し、宅配便の集配機能のほか、通販営業を含む様々なサービスを提供します。
 「実店舗で通販営業」というのは、奇妙に聞こえるかと思いますが、「ロ黒客」のビジネスモデルは実際とても変わっていて、店舗内には商品の実物は置かれていません。店舗には商品のパネルやQRコード等が陳列されており、注文は店内のタッチパネルモニターや携帯を通じて行います。注文した商品は、順豊の宅配便で配送されてくるという仕組みです。
 現段階では、商品の種類も豊富とはいえず、価格も安価とはいえないようなので、「ロ黒客」の成功に懐疑的な声も多く聞かれます。曰く、「自分の携帯やPCで通販を利用する方がずっと便利だ」という意見です。
 但し、同店は試食や試着、配送の難しい生鮮食品の提供も充実させていく計画です。また、この他にも、ATM、公共料金の支払い、共同購入/予約購入、クリーニング、家電修理、フライトチケット予約等、多機能サービスを備えています。
 筆者がこのニュースを目にした最初の感想は、「やっと日本のコンビニのような場所ができるのか」というものでした。中国のコンビニでも一部、類似のサービスを提供しているところが無くはないのですが、使い勝手が良いとはいえず、利用は普及していません。
 もし、「ロ黒客」がこれらのサービスをうまく機能させることができ、人々が日常的に利用する場所として認知されれば、通販ショッピング以外にも、商品広告やマーケティングデータ入手のポイントとしての価値が生まれることになります。それはとりもなおさず、順豊速運が「住宅地での集配拠点拡大」「収益源の多様化」の成果を獲得することを意味します。
「ロ黒客」は1年以内に4000店舗まで拡大する計画です。
 このように、「地域コミュニティに入り込む」という点は、ネット通販の2大巨頭である「京東商城」と「アリババ集団(タオバオ、Tモール)」も共通して目指すところです。京東は今年3月、上海・北京・広州等15都市の1万店以上のコンビニエンスストアと提携関係を結び、これらコンビニ店舗を自身の物流体系の一環として組込みました。これにより、注文から1時間以内の配送サービス(配送費無料)、15分以内の配送サービス(配送費有料)、時間指定配送の実現等、物流業界の課題とされてきた「最後の1Km」の配送サービスを劇的に進化させる計画です。
 と同時に、コンビニ側に対しては、京東の圧倒的なPVを誇る通販サイトをO2Oツールとして提供し、コンビニの売上げ拡大を図ります。
 アリババ集団は、さる6月12日、中国郵政集団との提携を発表しました。国営の物流企業トップである郵政集団は、中国全土に11.8万箇所の営業拠点を有し、国内で唯一、本当の意味で中国全土をカバーする物流・宅配ネットワークを持つ存在です。アリババの運営するタオバオ等ネット通販で購入した商品が郵便局拠点で受取れるようになるほか、将来的には先の「ロ黒客」のように、郵便局拠点でオンライン商品を注文したり、体験したりというサービスを展開する計画です。
 各社のO2O戦略の拡大により、今後ますますECサービスが身近になりそうです。


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