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  ■中国市場への視点 (株)チャイナワーク


三中全会で発表されたコミュニケのポイント
−今後10年の中国経済のゆくえ−

 
今月半ば、第18期中央委員会第3回全体会議、通称「三中全会」が閉会しました。一中全会や党内の重要人事が発表される二中全会に比べ、三中全会では重要な経済政策が発表される、というのが通例なので、市場の三中全会に対する注目度はとりわけ高いのです。

今回のコミュニケでは、人民元の上昇や日米欧での経済不況で行き詰まりを見せている現在の中国が、これからの10年間も成長を持続していくための様々な方策が発表されています。そして経済改革と並ぶ重要ポイントとして、急激な経済成長の負の産物である格差の是正も取り上げられています。
・官から民へ:市場価格メカニズムの積極的活用、起業支援の優遇政策
・金融・経済の自由開放化:人民元相場の市場化、金利自由化を推進、外資への開放分野拡大
・格差是正:不動産税立法、個人所得税の構造的増減税、農村部の発展と農民の財産保護
・戸籍登録制度改革:都市部への移住規制緩和、都市化の推進
・少子高齢化への対応:一人っ子政策緩和、定年年齢の引き上げ

 コミュニケ発表後、中国及び香港の株価指数が上昇したことから、市場での一定の評価を得たといえる一方で、開放度や具体性を欠く、という批判も上がっています。例えば、市場メカニズムの積極的導入や民間セクターの発展を推進するとは言いながらも、期待されていた国有セクターの民営化は明記されていない上、国有企業には「主導的役割」を担わせると明言されており、具体的で抜本的な表現は避けています。
 いざ内需拡大という中で、中国の労働人口(15〜59歳)は昨年、統計史上初の減少傾向に転じ、前年比0.6%減少の約9億3700万人となりました。今回の一人っ子政策の緩和と定年年齢の引き上げによって、労働人口の増加と深刻な社会保障資金不足に対抗する方針ですが、これが就職難や失業問題にも繋がるのではという懸念の声もあります。
今回、今後の中国経済の起爆剤ともなる経済・金融分野における自由化や規制緩和については、昨年9月29日にオープンした上海自由貿易試験区の方針を確認する程度の内容で、規制緩和の具体的な内容については、現在も実施細則の発表を待っている状態です。

 今回のコミュニケで発表された政策には、これまでの経済成長一辺倒から「官と民」、「都市と農村」、「貧富」、「規制と緩和」、などの様々な面で、所管部門・分野・地域などの垣根を乗り越えた難しい調整が必要となります。依然として国有企業や既得権益層を保護する保守的なコミュニケであるという見方もありますが、自由貿易試験区における外資の市場参入機会の拡大や一人っ子政策緩和による消費市場の拡大への期待も高まっており、早速、乳幼児関連企業の株価上昇に影響を与えていると報道も見受けられます。「2020年までに重要分野の改革で決定的な成果を上げる」と明言されており、今後5年間は特に注目です。

 
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