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  ■中国市場への視点 (株)チャイナワーク


上海株式市場一時騒然!
           −8.16烏龍指事件−


  8月16日烏龍茶がどうしたの?という名前がつけられたこの事件は、上海・深セン株式市場で中国大手証券会社・光大証券が、虚偽の買い注文約70億元(約1120億円)を出したことで、株式の急激な高騰下落を引き起こし市場を大混乱させた一連の不祥事のことです。ちなみに、「烏龍茶」とは何の関わりもありません。
 広東語でサッカーのオウンゴールを「烏龍球」と呼ぶそうで、「指」はこの場合、「クリック」のことを指しますので、「烏龍指」とはうっかり間違いクリックという意味です。事件発生当初、光大証券は70億元の誤発注を誤操作によるものだと主張していたため、「烏龍指事件」と名づけられたのです。

 事件が発生したのは8月16日。同日の上海株式指数は比較的横ばい状態でしたが、11時5分を境に、たった3分間で5%もの高騰が見られました。その後、急落がみられたものの再度高騰し始め、追って一部メディアが、株価急騰は光大証券の誤操作によるものと報道したものの、市場の熱気は冷めやらず、結局午後1時には光大証券によるA株の取引が一時停止となりました。
 ちなみに、中国の株式市場にはA株とB株の2種あります。A株の正式名称は「人民元普通株」と呼ばれ、国内の企業及び組織が発行する株式で、海外投資家には開放されていません。B株に比べ、取引規模が大きく、大手・優良企業が上場しています。今回、誤発注された銘柄も銀行などの金融株が中心で、その他交通運輸・公共事業関連など、いずれも大口安定株が急激なストップ高となったため市場の混乱を招いたのです。

 事件発生同日、証券監督管理委員会(以下、証監会と略記)が光大証券の大量買い付けによる株式市場の混乱について調査を開始しました。老若男女が身近な資産運用として株式取引をする中国では、この前代未聞の不祥事に大慌て。そして、メディアだけでなくネットでもこの話題でもちきりです。
 担当者の誤操作、光大証券或いは上海証券取引所のシステムエラーの可能性が報道される中、ネットでは、誤操作なんてありえるのか、という疑念はもちろんのこと、担当者の指が太くて打ち間違えたとか、掃除のおばちゃんがキーボードを拭いていたらうっかり、などの突拍子もない憶測が飛び交うほどで、この事件に対する庶民の注目度が伺えます。
 事件発生の原因はそもそも光大証券の自動発注システムに問題が発生したことにあったようですが、事件のプレスリリース前に、上場投資信託の売却や株価指数先物を空売りすることで損失を一部相殺したことが確認され、これが非難の標的となりました。

 事件発生からちょうど2週間が経過した8月30日、上述の空売りについて、証監会はインサイダー取引にあたると判断し、光大証券に対して5億2300万元(約84億円)の制裁金を科したほか、幹部関係者4名に対しては合計60万元(約960万円)の罰金と業界永久追放を決定しました。光大証券が得た8721万元(約14億円)の違法所得に対する制裁金は、史上最高かつ厳戒なものです。証監会からの厳重な決定によって、拡大する憶測・疑念・批判が徐々に収束に向かうのではないかと思います。しかしながら、国務院直轄の大企業のうちの1社である光大グループによって引き起こされたあまりにも重大な誤操作とコンプライアンス違反は、改めて中国の株式市場、ひいては金融市場における未熟さとリスクを暴露する結果となりました。



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